武士道シックスティーン 誉田哲也 [本]
昨日読んだ本の主人公が、奇しくも宮本武蔵オタクだったという・・・昨日のブログ記事から繋がってる~。こういうことは嬉しいもんですね。
バガボンド同様、勝ち負けに対して深い考察あり。
ネタばれごメ~ン。白一本!
剣道もの。武蔵オタクの磯山香織は勝ち負けにこだわる全中2位の実力者。剣道を志すものは師以外は敵。攻撃的で喧嘩腰だから相手を疲弊させている不器用な女子高生。
もう一人の主人公、甲本(西荻)早苗は日本舞踊がないから、剣道を始めただけ。美しく動け、日々向上できれば良いので、勝ち負けにこだわらない。そんな正反対の二人が出会って、甲本が磯山を負かしたものだから~磯山は勝つことに囚われて・・・。
でも甲本はなかなか土俵に上がってこない。
本気でない彼女を負かしても、負けた気持ちだけが大きくなっていく。
疲れ果てた磯山に、たつじいは言う。
「勝ち負けに拘るってのは、相手に勝って喜ぶってことだろう。
自分がある時点で優れていた。そのことを確認して、安心するってことだろう。
つまり比較対象が他人、ってわけだ。
対して、早苗ちゃんの考え方はどうか。・・・習ったことができるようになる。前より構えがよくなる。それは何を比較対象にしているかっていうと、過去の自分ってことに・・・(略)
ようは両方とも、今の自分と何かを比べて、その比較対象より優れていたらいい、劣っていたら駄目と、そういう判断をしていることになる。(略)それが悪いといっているんじゃないよ。ただ、それが全てじゃ、大切なものをみうしなっちまうんじゃないか。」
兄は言う。
恨んでるのは負けたからじゃなくて、
父さんがあいつを褒めたからじゃないのか。
会社を倒産させられて蒸発していた早苗の父も言う。
「負ける不安はいつだってある。(略)・・・でもね、お父さんは一つだけ、それに打ち勝つ方法を、見つけたんだ。」
「それが好きだっていう気持ちを自分の中に確かめるんだよ。その好きだって気持ちと不安を天秤にかけるんだ。(略)好きだって気持ちが重たかったら・・・やるしかないんだよ。(略)誰かに先を越されたら、次のを見つければいい。」
そして、磯山は壁にぶち当たったからこそ、思い出す。(『バクマン。』でもそうだった(笑。)
剣道が好きだ、と。
自分を捉えてきた武蔵の本も年寄りのだいたいが60歳になって書き出す自伝記とは違う、好きだから残したかった本なんだ。
磯山は早苗に勝負を挑み、早苗も向かい合う覚悟を決める。
お互いがお互いの有りようを認め、力を高めあっていくという展開でハッピーエンド。
すっきりした。売れてるわけだわ。
シリーズでまだまだセブンティーン、エイティーンが待っている。楽しみだ~。
でも、水を差すようだけど、好きって気持ちも、過去の自分や相手と比較して手応えがあると手っ取り早く芽生えるもの、私の場合。好きって気持ちを維持するのもしんどい作業だと想ったり。プライド無視派、好きって気持ちを壊すのが好きな人もいるし~。覚めててごメーン。
土俵はちがっても「ピアノの森」のカイと修一みたいな関係から展開する話なのかな?
「好き」・・・簡単なようで難しい
by じんこ (2009-08-24 15:24)
もっと、飄々としてるよ。文体も。
難しいよね~。好きだからこそ、逆の感情になったり。
by あゆこ (2009-08-26 13:36)