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『地震と火山の日本を生きのびる知恵』 鎌田浩毅さんのお話 [本]

地球科学者の鎌田浩毅さんが面白い!
自称【科学の伝道師】。京都大学の講義は数百人を集める人気なんだそう。
モットーは”面白くて役に立つ”なんだとか。人気もうなづけます。

著書多数!注目の話題 『地震と火山の日本を生きのびる知恵』 
についてのお話を整理がてらザックリ文字に起こしてみることに。

周知の話題だけど、かみくだき方がいいんです。
特に後半の生き延びる為の【長尺の根】【ブリコラージュ】というキーワードが素敵です。
まさに玄侑 宗久和尚のいう【無常という力―「方丈記」に学ぶ心の在り方】の科学版。
自然科学を知るからこそ”想定”と”絶対に”甘んじきらないんですね。
では、行きます。


地震と火山の日本を生きのびる知恵




◆どうしてこの本を書いたのですか?
 3.11後に国土が地球の動きに入っちゃった=岩盤が変動域になっちゃったんですね。1000年ぶりの、それより大きいのが起こっちゃったから今までの想定はリセット。そういうなかで生き延びなきゃいけないから、知恵が必要だなという意味で書いたんですね。


◆余震の可能性は?
 宮城県の沖合で、南北500km東西200kmのとんでもない地域の岩石が割れちゃった。余震はこの地域の割れていないところが割れて10年起こる。だいたい一年半後、マグニチュード1落としながら起きる。これからM8が起きても何ら不思議はないというのが地球科学の考え方。地盤沈下しているところに5m級の津波が来ると壊滅的・・・


◆海以外の陸地では?
 内陸でも陸地が5m広がって割れているから直下型地震が起こる。東北関東に阪神淡路級の震災が起きても何ら不思議はない状態に。東京でM7が起こりうる。311以降、新たに加わった事件なんですね。誘発地震? 陸地が引っ張られて起こるから誘発地震って言葉でもいいですね。


◆東海地震、南海地震は?
 そろそろ【満期】がきてるんですね。満期というのは銀行で・・・(知ってるわ)
 地震だからおろしたくないんだけど100年くらいで地下でエネルギーがたまって満期が来る。東海、南海、東南海と3つの地震が2030年代に起きるだろうと我々地球科学者は全員考えている。東日本大震災と関係ないんだけど、時期的に重なってきちゃった。ざっと100年に一回そういうのが起きてきたんですよ。1944年とかね、次に来るのが2030年くらいですね。

 もう一個非常に困ったことにね。紀伊半島沖の南海地震、東海、東南海地震は3回に1回一度に起きるんですよ。これ≪三連動地震≫というんです。300年に一回くらいで。歴史をみると1707年に宝永地震が三連動地震。運悪く次が三連動地震の順番なんですね。


◆怖いことばっかりなんですけど逃げ場は・・・
 どこで起きてもおかしくないから、日本にはないですね。時期が特定できるのは三連動地震しかないんですよ。これについては起きると思って準備して起きなかったらラッキーくらいに思ってもらいたいですね。


◆予知ってできるの
 研究所では電磁波との関連などの論文の書けるような研究は進んでるんだけど、実用的な予知は無理です。歴史地震っていって古文書を見て、一応2030年代までは割り出したんだけど何月何日までは言えないですよ。311は1000年ぶりだから予測しにくかったけど、再連動地震が2030年代って割り出せるのはすごく画期的な成果なの。それだけは使って準備して下さい。被害規模はざっと10倍。東北は日本のGDPの3~4%だけど今度は太平洋ベルト地帯。桁違いだからこそこの本を書いたんです。



◆専門ど真ん中の質問ですが、富士山の噴火は起こるの?
 よく聞かれるんだけど、火山学的には100%噴火しますって答えます。ただ、明日とか来年とかは言えないのですが、マグマが動いているんです。スタンバイしている状態になっているから私たちはその動きを精密に研究しています、と答えています。


◆311の影響は?
 あったんですね~。315に富士山に大きな地震が起きたんですよ。マグマだまりのすぐ上ですね。岩石を溶かすとマグマになるんですけどね。地下20kmくらいのところに溜まっているんですね。それがでてくると噴火なんですね。マグマだまりは溶けた岩石を入れた袋なんですけどね。地震でその天井のところにヒビが入っちゃったの。僕たちはひょっとして噴火するかも、と肝を冷やしました。その後、落ち着いたからよかったんですけどね。


◆噴火の予知はできるの?

幸い火山の予知はできるんです。火山っていうのはね、マグマがあがってくるでしょ。マグマは液体で上がってくるとき、通路をバリバリと割って上がってくるのね。その時に小さな地震を起こすんですよ。その地震の位置が、今、20kmでしょ、15kmでしょと浅くなってくるから、時間的な余地ができるんです。ざっと一か月くらいから予測できますね。

 もう一つ、興味深いのはマグマが上がってくると、山が膨れるんですね。1mmの何分の一かだけど、山の傾斜が急になるんですね。非常に精密に測る機械があるから、それを見てわかるんですね。その二つでマグマのあがってくる場所が予知することでできるんです。100個くらい火口があるんだけど過去山頂以外からも出てきてるんですね。
 例えば300年前くらいは南東側に穴を開けて火山灰は江戸まで降ってきたんですね。横浜で10cmくらい江戸で5cmくらいでしたね。火山灰は雪のように融けませんから一か月くらい舞い上がるんですよ。喉、目、大変な被害でした。

 あと火山灰がきて何が困るかというとコンピュータが止まっちゃうんですね。静電気が細かい塵を吸い付けるから火山灰がずっと舞っているとコンピューターの中に溜まっていって突然フリーズするということが起こるんですね。ATMに電車、ライフライン全部止まると大変なことに江戸時代並みの火山灰なら30兆円の損失になっちゃう。


◆火山の数は?
 気象庁が決めるんだけど活火山は110個。311以降、20個の活火山の下で地震が起き始めてびっくりしたですけど。今みたいなことはちょうど過去、2004年12月のスマトラ沖の地震の時にもあって、後から活火山で地震が起き始めて一年後たってから活火山が噴火し始めたことはいくつもあるんですね。歴史的な事実としてあるんですね。誘発噴火というですけど。桜島と霧島連山の新燃岳は注視していかなければいけなくなってますね。

 地震も火山も変動期に入ってしまったというのが正しいです。そういう中でくらしていかなければいけない。生き延びようということなんです。


お先まっくらという感じになっちゃうけど、後半は事実は事実として受け止めて、いかに生きていくかなんですけど、
◆後半のキーワードの【長尺の根】とは?
 
 来年の事をいったら鬼が笑うなんていう生活してますけど、地球科学はね。10年とか100年とかだけではなく、1000年とか時には1億年で物事を語るということをしている。長い尺度、それが長尺。
1千年ぶりの地震が起きても絶滅しないで生きている。変動域でどうやって生き延びるかという知恵が組み込まれているんだろうと考える。火山だと一万年に一回日本列島、灰まみれになるということが起きてる。前回は7300年前。
こんな環境でも、日本民族は生き延びているということに着目してほしい。


◆どうしてこんなところに住んでいるの?と思うんですけど。
 もし、日本は地震や火山がなかったら住むとこないんですよ。つまりね、日本は山国でしょ。地震のおかげで平地ができ、作物が植えられたので必ずしも悪いものじゃないなんですよ。あと水ね。地震の起きる場所は必ず水脈があって湧水がある。ある意味必然的にここにいる。

 一瞬ね、一瞬しのげば後は100年、1000年恵みを享受できるわけですね。つまりこれを地球科学では
【短い災害と長い恵み】っていってるんだけど。
 これ火山もそうです。みんな被害にあうわけですけど、例えば富士山だと300年に一回噴火しているわけですけど、周辺ではミネラルウォーターや温泉。火山灰によって肥沃な土壌が得られて美味しい農産物や乳製品が食べられる。

 日本人は【短い災害と長い恵み】の中で生きてきたのだから、この知恵を持ってこれからもなんとか生きていこうという提案なんですね。欧米の動かない大地に生きてきた民族とは違うんだ。我々は動くからそこに上手に乗りながら生きてきた。日本は動く大地に即応しながら生きていく知恵を持っているはず。
 あと、300年に一度、噴火は一か月前に起こるという地球科学の知識も必要。これは無にはできないと啓発活動をしているんです。


◆ほかに心構えは?
 あと、変動をマイナスにとらえない。変化こそ命を長らえるコツ。日本人はどこかそうとらえてるはずでは。今一度思い出してほしい。

 想定外は科学の世界では当たり前。ニュートンの物理学も否定されたのではなくてアインシュタインによって進化した。アインシュタインの理論が覆されるかも・・・という話題でわくわくしている科学者は多いはずです。(キラキラ) 想定外が進歩を生み出す。ごく普通としてプラスととらえたい。マイナスととらえないで自然は全て想定外が当たり前だと思っていれば、苦しくない。想定外が標準だったら何も恐れることはない。人生もそう。

【想定外を上手に乗り越える、うろたえない、楽しむ。臨機応変にしなやかに生きる。】
 それが日本民族が生き延びてきた知恵だと思う。先祖から受け継いできた知恵。
全てがかっちり決まっているわけではない。しなやかになれば、プラスに置き換えられるんじゃないか。


◆本にあるレヴィ=ストロースのブリコラージュの発想というのもそう?
 そう、未開の人たちがどうやって暮らしているか、というのを見たときに、椅子がいるといったときにありあわせのものでなんとかする。これがそのすごいやり方。日本人ももともと持っていた。あれがないこれがないではなくて、臨機応変にあれができる、これができる。これが減らせる。エコの思想にもつながる。


◆電力なくなったらどうするんだ~といろんなところでall or nothing的な考えになっちゃってるけど。 そう、生活が便利になっちゃって、みんな忘れ去ってる。
 レヴィ=ストロースも言ってるけど。未開国では全部活きてる。全然劣っていない。彼らの方が活き活きといい生活をしている。もつとブリコラージュの生き方をすべきじゃないかってのがレヴィ=ストロースの思想だったんですよね。その思想は今まさに日本人に必要なのはこのブリコラージュだと思うんですよ。

 そして、ふたつの”じりつ”が大事。科学に全部頼らない。自分で立つ。自分で律する。そのうえで科学を存分に使ってください。と言いたい。こういっちゃなんだけど、国も自治体もあてにならない。でも頑張ってたんですみんな。でも全体に頼られちゃったらもたないんです。ブリコラージュも自立でしょ。


◆学生の変化は?
 話すうちに当事者感覚が出てきましたね。2030年は自分たちが何とかしなくちゃいけないという自覚。


◆視座は?
 311以降、10年間話し続けてきて間違ってなかったと思えた。本も売れて必要だと思われている実感も出てきている。ただ、僕だけでは伝えきれない。311以降、変動期に必要な知識や知恵をわかりやすく伝えられる人がいないと、生き延びられないと思うから、誰か手をあげてくれないかなと思っています。科学の伝道師募集中です(笑)




******************
 だそうです。どなたか~。
 日本は【地学】離れって言われているから余計に貴重な方だと思われますね。専門家なのに専門用語の中に入り込まないし、何より科学が好きなんだな~という語り口で、【宇宙は本当にひとつなのか】の著者、村上斉さんと同じものを感じてしまいました。

 地震の話について詳しくはここかな。
http://webdacapo.magazineworld.jp/top/feature/84580/


 あと、【短い災害と長い恵み】の部分ではこんなことも思いました。
 ~原発が爆発しても一瞬がまんすれば、資本主義の土壌では長く恵みが享受できる~
 こんな右上がりな発想も、日本人の遺伝子に組み込まれていたのかもしれないので、原発推進システムの稼働も自然な発想なのかもですね。地震国なのに、地震国だから(´Д` )   そもそも、先の大戦も同じかな。アメリカともに経済的に発展したので、まさに一瞬我慢すれば、させれば経済的な長い恵み、という成功体験も根深そうです。降ってくるものは後々役に立つ火山灰ではなく、培ってきた自然を人間を含めて台無しにするものですが、まぁ、地球規模では人間のいない太古の状態に戻るということにすぎないんでしょうけどね。
地球の記憶が太古に戻したいから人間がそれに動かされているのかもしれませんヽ(´ε`●)ゞ

 その他の著作では 『資源がわかればエネルギー問題が見える : 環境と国益をどう両立させるか』2012
も興味深いです。

資源がわかればエネルギー問題が見える (PHP新書)



 レヴィ=ストロースの話題からもわかるように、『座右の古典 : 賢者の言葉に人生が変わる 』2010 なんて著作も。幅広いから人気が出るのも当然でしょう。

座右の古典 ―賢者の言葉に人生が変わる



 それから、内田樹さんのブログ「En Rich」(沖縄)のロングインタビュー10/5を読んで、日本の誇れるものは自分の身についているのかしら、とモヤリとしてところだったので、まとめたらメンタルに少し活路が。感謝。
http://blog.tatsuru.com/


 ~と思っていたら、NHK【情報LIVEただイマ!】に出演されてたんですね。
「火山学的には富士山は100%爆発する。」というハラハラする話題を、その根拠と3.11以降確実に起こっている地殻変動をわかりやすく解説してたみたいです。(ラストしか見てなかった~。キャスター:ネプチューン原田泰造の神妙な面持ちだけが印象的)
 こんな脅かしを出してショックドクトリンを引き起こそうとしているなんて陰謀説をみかけましたが、この方は地学という地味~な分野で長年培った経験則をわかりやすく公表している科学大好きな人にしか見えませんし、メディアは津波の警告を出し続けられなかったことを内省していますよね。


事実は事実として厳粛に受け止めつつ、
発想をブリコラージュしていきたいものです。




地震と火山の日本を生きのびる知恵

地震と火山の日本を生きのびる知恵

  • 作者: 鎌田浩毅
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2012/03/02
  • メディア: 単行本

 


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コメント 4

さよ

興味深く読ませて頂きました。
千葉県の大半には富士山の火山灰土が積もってます。
それで、千葉県の野菜は「甘い」と定評がありますw
マイナスがあればプラスもあるんでしょうね、きっと。
by さよ (2012-10-08 09:58) 

春分

諦めよく生きるのがいいのかもな。
・・・恐ろしく暑い季節が続き、男は博士に尋ねました。「富士山を爆発させ
温暖化を防げませんか」「できるが最後の1人は逃げられない」「僕がやる」
その年から、世界の温暖化は収まり、人々は電気の使用も少なくてすみ・・
そうかー、火山の話からレビ=ストロースまで話が及ぶのか。
by 春分 (2012-10-08 12:11) 

あゆこ

さよさん♪ コメントありがとうございます。
関東ローム層は父が、粘土質だから頑丈だ!地震が来ても~なんて昔々言ってましたが、今やヒビだらけですし、その下層を考えると(;_;)
今頃、朝日新聞の軟弱地盤の地図を見て、あらら~って感じです。

野菜が「甘い」理由にもなっているんですね。
メモメモ・・・どうしてだろう~好奇心!
いつかプラスになるものが降るならとりあえず我慢できる~かも!
by あゆこ (2012-10-08 19:32) 

あゆこ

春分さん(#^.^#) コメントありがとうございます。
諦めよく生きるのはマイナスなのかプラスなのか。プラスにしたいところです。
・・・おぉぉ。宮澤賢治ばりの童話ができそうですね。面白いデス!
太陽活動の具合もあるので寒冷化にならない加減でお願いします。
と、人類はいつでも我が儘なのでした。

そう、火山から人類学までなんです。文中の内田樹先生もですが、大学教授の伝えることを義務にしてる、話好きの方々って、いろんな考えをいい具合に組合わせてくれますよね。
あ、それこそコラージュ。思想のブリコラージュが生業なのか。
by あゆこ (2012-10-08 19:48) 

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