ベン・シャーンの「ラッキードラゴン」 [art]
「ラッキードラゴン」
第五福竜丸を課題にしたベンシャーンの60年の作品が夕刊に。
流麗な線は一本もない。揺れる線が無念さをすくい取る…という記事も胸に迫る。
芸術が媒体となる可能性を「福竜」という言葉の意味に載せたい。
ともすればポップで馴染みやすい造形、そこに浮かぶ深いメッセージ。
福島県立美術館所蔵のこの絵。
巡回を始めるこの企画にも、この記事にも「核に揺れた今年だからこそ受け止めなければ」という気概を感じる。
芸術家も学芸員も新聞も、自分の仕事で貢献できる手段を考え続けている。
こんな記事もありました。
伝えたい「第五福竜丸の記憶」 吹コンで玉名女子が演奏
自由曲をラッキードラゴンに決めた直後、大震災が起きた。いまも福島第一原発事故の放射能被害に苦しむ被災者を思うと、演奏することに迷いもあった。しかし、被曝が過去のものでないことを伝えたいと、部員たちは福竜丸の映画を見て曲の背景も学んだ。部長の山田夏奈さん(18)は「悲惨な出来事が起きた今だから伝えたい」。
曲のもとになった絵「ラッキードラゴン」は、米国画家ベン・シャーンが被曝で亡くなった福竜丸無線長の久保山愛吉さんを描いたもので福島県立美術館に所蔵。ベンは自身の絵本「ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸」で言っている。「無線長は、あなたや私と同じ、ひとりの人間だった。彼を描くというよりも、私たちみなを描こうとした。(中略)亡くなる前、幼い娘を抱き上げた久保山さんは、我が子を抱き上げるすべての父親だ」
福竜丸事件では、船員だけでなく日本中の人が「死の灰」におびえた。雨を恐れ、魚や水や野菜を心配した。あれから57年が過ぎたいまは、原発事故の放射能汚染から幼い子らを守ろうと必死だ。
(抜粋)
原水爆の 被害者は
「わたしを 最後に
してほしい」といって
かれは なくなった。
ひとびとは わかってきた――
ビキニの海も 日本の海も アメリカの海も
ぜんぶ つながっていること。
原水爆を どこで 爆発させても
みんなが まきこまれる。
(絵本より)
ベン・シャーンが描いたラッキードラゴンシリーズの絵に、ビナードさんが文を寄せて絵本にしたのが「ここが家だベン・シャーンの第五福竜丸」(集英社、07年に日本絵本賞)。
ビナードさんは言います。
かわいそうな久保山さん、気の毒な乗組員という被害者の物語、犠牲者の物語でした。そうした一面はあっても、本質はそこでないと僕は思った。本当は英雄の物語だと。
乗組員は「死の灰」を浴びただけでなく、その灰を持ち帰った。彼らが採取したサンプルのおかげで、水爆実験だったことが判明した。それは偶然ではなく、乗組員の知恵と行動があったからです。
ビナードさんは警告しました。
「ひとびとは 原水爆を なくそうと 動きだした。けれど あたらしい 原水爆を つくって いつか つかおうと かんがえる ひとたちもいる」
(インタビュー抜粋)
そういえば、原発も核を保有する為に存続するという一面を持つのよね。
「核の冬」はまっぴらだわ。
【追記】
そして、福にまつわる二つの出来事から「福」という字の一つの側面を、ここで考えなければいけない。
偶然にも「このままではいけない」、と身を呈して指し示す指針になっている。
何がラッキーなのか、何が幸福なのか、神さまがいるならば大きな枠でみているというのか。
この側面は、言葉を大にしては言えない。あまりに大きな無念と犠牲をともなっているから。
そして、もうひとつの福の側面を本来の福にするのは私たちの役目なのだろう。
《再追記》
左側の竜は核爆発を示しているのだそう。
竜を核にみたてるなんて、芸術家の感じ方に身震いを感じる。
人はこの神の領域の生き物である、この竜を扱えるのだろうか。
奇しくも辰年。賀状を通じて崇め奉ったところ。
さらに、竜にまつわる人間の要求も含めて、鎮まり給えと祈りたい。
★ETVでも日曜美術館で特集が。是非観ようと思う。
日曜美術館「静かなるプロテスト~反骨の画家 ベン・シャーン~」
放送日:2012年1月15日(日曜) 午前9時~9時45分
再放送:2012年1月22日(日曜) 午後8時~8時45分
出演:
脚本家 山田太一
詩人 アーサー・ビナード
写真家 江成常夫
福島県立美術館学芸員 荒木康子
http://blog.goo.ne.jp/vivamico/e/ffdf7725ce3a09b3af0be8c30034eaf3
http://blog.goo.ne.jp/11kitano22/e/9f91fd3398a039ec395ad4d8cbbf3736
http://www.asahi.com/edu/suisogaku/contest/SEB201110210009.html
2011-12-30 14:16
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