SSブログ

『風に舞いあがるビニールシート』森絵都 [本]


風に舞いあがるビニールシート
満を持しての直木賞受賞作品。
東京タワーでは泣かなかったけど、重松清の『卒業』以来、表題作で本気で泣けた。
うまい。この人は。児童書もいちいちよかった。
児童書以外は読んでいなかったけれども、どうしてこう心を揺さぶるのか。
児童書では感じられない、エロティックな部分にもググッと惹かれてしまう。
それが生き方に素直に直結するからだろう。
風に舞いあがるビニールシートの例えも上手くてぞわぞわとした。
込められた心情を想像するだに恐ろしい。
どこのビニールシートも舞いあがらないことを祈ってしまう。

話は変わるけれども、文中主人公がボランティアを始めるきっかけが、
イラクの人質事件をおばちゃま達が話すのを聞いたから。
「あなたは何もしていないじゃない。」 

イラクで人質になった若者を「自己責任」としてただ批判するだけの世論。
それを力説する知人に、
「ちょっと違うんじゃない?」というのにどれだけ勇気が必要だったかを想い出した。
ボランティアに対して、売名、利益を絡ませてしか思考できない論調。
飛躍するが、学校で友だちが悪いことしても注意できる生徒がいない、
と嘆くことと同じだと思った。

◆楽天ブックス紹介◆
 児童文学の世界では既に数々の文学賞を受賞している人気作家の森絵都さん。
一般文芸に進出したのは最近ですが、
前作の『いつかパラソルの下で』は直木賞候補にもなり、話題を呼びました。

『風に舞いあがるビニールシート』は
「市井でこつこつと一生懸命働く人たちをテーマに書いてみたい」
ということで生まれた短篇集です。
国連難民事務所に勤務している表題作の主人公・里佳は
上司のエドと恋愛し、七年間の結婚生活の末、二年前に離婚。
そのエドがアフガニスタンで死に、立ち直れないでいる彼女を、
エドが救った難民の少女に会ったという記者が訪ねてきて……。
 我が儘なオーナーパティシエのために雑務をこなす秘書、
捨て犬の世話をするボランティア、
時間に追われる社会人学生、
仏像に魅入られた修復師。
温かなユーモアに満ち溢れた筆致で紡ぎだされる
ハートウォーミングでちょっぴり泣ける一冊です。


nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。