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重松清『卒業』『みんなのなやみ』 [本]




卒業



卒業・・・生きていく上でのわだかまり、のりこえられなかった気持ち。よどんでしまった流れが、『親の死』というものをきっかけに、あるいは死に直面せざるをえない出会いをきっかけに、さらさらと流れ出す。中学の図書室の一冊だけども、身につまされるほど大人向け。

収録された4編のどれも、一時的ではなく本物の涙が流れる。こんなに泣いたことはない。




『まゆみのマーチ』一緒に歩を進めること。愛を伝えること。直線でいいんだ、と信じることができる一編。

『あおげば尊し』はとても厳しくて、結婚式にも呼ばれなかった先生が、いつのまにか集まった元生徒達の「仰げば尊し」の歌に見送られていく。厳しさという愛に気が付かされる一編。

表題の『卒業』は言葉もよいので抜粋。

★ どんなにしても感情がまとまっていかないもどかしさを思い出した。伊藤が死んでからしばらくね感情が砂のようになっていた。手のひらで集めて、こねて「悲しみ」の形にまとめようとしても、形作った端から砂はさらんださらと崩れ落ちる。

★ 思い出の僕たちは自分がどんな人生を歩むのかなどなにもわからず、気楽に、けれど頼りなく、ふらふらと、へらへらと毎日を過ごしていた。僕たちは七月の子どもだった---始まったばかりの夏休みが永遠につづくと錯覚していたね七月の子ども。陽射しはまぶしく僕たちを照らしていた。

★ いつか二人は、あのころの頃わ振り返って、おとなたちが風景にしか見えなかった自分に懐かしさを感じるだろう。それが甘いなつかしさなのか、苦い懐かしさなのかは知らない。ただね懐かしむことができるのは幸せなんだ、と思う。「卒業」ならそれができる。






みんなのなやみ



『みんなのなやみ』 抜粋しちゃっていいのかな。子どもにも同じこと言い出すかも。

いい学校にはいれないと苦労する。だから勉強しなさい。でも勉強したくないんだ・・ではきりがない。一つ目は 踏み込んで、いい学校や苦労する を疑ってみたらどうだろう。二つ目は勉強したくないんだ、といいはるだけでなく、「勉強より大切なものがあるんだ」でもいいし、否定ではなく、前に進もうよ。




ピアスの穴開けるからお金ちょうだい では無理。化膿しないの?と聞かれて安全面で証明できるのか。どうして、開けたいの?今じゃないとだめなの?自分で生活できるようになってからじゃ遅いの?といった問いにきみはどう答えますか。




クラスで余ってしまったり、知らない人に囲まれて相席になったり。いろんな体験をいっぱいして、みんなおとなになっていく。~いつも自分から余りであることを引き受ける女の子が登場して、その子がすごくおとなだった。




いじめ 残酷な心に対して、ぼくらが言いつづけられること。 自分が負ける可能性を引き受けないで、一方的に勝ってやろうとするのはいじめかリンチだ。

おとなが、「おまえがそれをやった時点でもう負けなんだ」と言いつづけるしかない。いじめの心のフタを開けてしまった時点で、根本のところで負けているんだ。


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